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M2M向けネットワークの最適化

May 01, 2013

近年急激に成長しているM2M市場。総務省の発表資料によると、2012年3月末の時点で日本における携帯電話の普及率が100%を超え、携帯電話の保有台数が日本の総人口を超えました。携帯電話一人一台は当たり前、一人で2-3台も珍しくない時代となりました。移動通信の分野では人と人が繋がる時代の次に機械と機械が繋がる時代が来ると言われており、そんなM2Mが最近注目を浴びています。

M2M(Machine to Machine)とは機械との通信のことで、自動車、電気メーター、自動販売機、ビルの管理設備、家電製品などに通信モジュールが組み込まれ、通信を行うことを指しています。では、M2Mにはどのようなアプリケーションがあるのでしょうか。例えば、欧州における自動車の緊急通報システム「eCall」が挙げられます。自動車に通信モジュールが組み込まれ、事故などの緊急時に自動的に車載機番号と位置情報をネットワーク経由で送信し、救助活動を円滑に行う事でより多くの人命を救うことが可能となります。eCallの導入により、年間で2,500人の自動車事故による死亡者数が減らせるといわれています。また、自動車に通信機能を持たせれば、インターネットの閲覧やカーナビゲーションシステムと連動した交通情報の配信、運行管理などが可能となります。

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http://ec.europa.eu/information_society/activities/esafety/ecall/index_en.htm

 

実際の事例では端末同士の通信よりも、端末からネットワークサーバーへの通信といったように、片側のみが機械端末であることが多いといえます。そのため、3GPPではあえてM2Mという呼び方はせずMTC(Machine Type Communication、マシン型通信)としています。MTCは「必ずしも人間の介入を必要としないデータ通信の一形態」と定義されており、人間同士の、しかも音声通話が主である従来の携帯電話通信とは性質が異なることを窺い知ることができます。

現在の移動通信ネットワークは人間同士の通話を前提に構築されており、当然ながらM2M通信向けに最適化されている訳ではありません。では、M2M通信の特徴にはどんなものがあり、どのようにM2M向けにネットワークを最適化できるのか、幾つか例を挙げてご紹介します。

低モビリティ:

①固定された、移動しないデバイス。スマートメーターや自動販売機などがこれに該当します。

②特定の狭いエリア内のみで移動するデバイス。病院内でしか移動しない入院患者に取り付けられた医療測定機器などが当てはまります。

この様な特性を持つM2Mアプリケーションの場合、位置登録の頻度を下げることによってネットワークの負荷を軽減させることが考えられます。また、ネットワーク側で位置情報を記憶しておき、登録されている基地局のみでページングを行うなどして、処理を簡略化できます。

時間制御:

スマートメーターや気象情報の測定デバイスなど、一定時間に一回通信するといった、リアルタイムでの通信を必要としないアプリケーション。

ネットワークの混雑時にはアクセスを規制し、空いているときに通信することでピークをならす事が可能となります。ネットワークの構築はピーク時の最大通信量を想定して設計されるため、ピークが下がると必要投資額の低減が期待できます。これは人間同士の通信では想定されない、M2Mならではの事例といえます。

パケット通信限定:

音声通話が全く不要であり、パケット通信のみを必要とするM2Mアプリケーション。多くのM2Mアプリケーションがこれに該当します。従来の通信規格において必須である音声向けの交換機(CSドメイン)への接続を省略し、ネットワークの処理を減らすことや、デバイスの機能を減らしコストを下げることが考えられます。また、電話番号の割り当てを省くことにより貴重な資源の枯渇を防ぐことができる可能性があります。

デバイスのグループ化:

個々のデバイスに通信モジュールを埋め込む代わりに、複数のデバイスをゲートウェイなどに集約して通信する場合、それらのデバイスを一元管理し、まとめて課金する仕組みと共に、個々のデバイスの位置などを更新する機能も不要となる、ホームオートメーションなどのアプリケーション。

冒頭で触れた緊急通報システムeCallも「低モビリティ」に見られる特性と同様の最適化が可能となります。移動頻度の高い車に実装されるアプリケーションなので、一見矛盾しているように見えますが、緊急呼の場合は発信のみで着信がありません。そのため、位置登録や移動管理プロセスを完全に省略し、有事の時だけネットワークに登録することによって制御信号を大幅に削減することができます。

このように、M2Mのデータ通信は従来の人間同士の通信とは異なる特徴がみられます。ネットワークの設計をM2M向けに最適化することにより、収容可能なデバイスの数を増やしたり、ネットワークの構築に必要な投資金額を抑えたりすることができます。現在M2M向けネットワークの最適化は国際的な標準化団体である3GPPで研究が重ねられています。エリクソンは3GPPをはじめとする標準化団体に参加しており、新しい技術の提案など、積極的に取り組んでいます。

モノとモノ同士がつながるネットワーク社会。これは交通、医療、エネルギー、環境等の分野で高度な情報通信技術を活用し、安心、便利な生活ができる社会です。エリクソンはより良い社会の構築に向けて、貢献していきます。

*2013年5月8日(水)に東京ビッグサイトで開催される「第2回ワイヤレスM2M展」にて講演いたします。詳細についてはこちらをご参照下さい。

 

参考文献:

3GPP TS 22.368: “Service requirements for Machine-Type Communication”

3GPP TR 23.888: “System Improvement for Machine-Type Communication”

 

 

エリクソン北東アジアにてコミュニケーション・サービスソリューションを担当。