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LTE測位とRTK: センチメートル単位まで精度が向上

December 18, 2018

GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)をベースにした高精度測位は、さまざまな分野の商業用途にますます用いられています。なぜなら、GNSS受信機がかつてないほど安価になり、入手しやすくなったためです。GNSS受信機はモバイルハンドセットに組み込まれているのが最も一般的です。GNSS測位は複数の人工衛星の信号と位置に関する情報に基づいており、セルラーネットワーク事業者によって提供される、モバイルデバイスからの情報も補助的に利用されることが多いです。RTK(Real Time Kinematic:リアルタイムキネマティック)は、GNSS測位の精度を数メートルからわずか数センチへと大幅に向上させる技術です。しかしながら、RTKの課題は、マスマーケットのユースケース(自律走行車など)に使われる各種のデバイスをすべてサポートすることです。LTEネットワークはこの課題を克服し、ユーザーに高精度測位サポートを提供できるようになりました。

次に、これを実現する3GPP LTEの最新機能について紹介します。

自動車分野の中でも特に自律走行車は、高精度測位の主要な新分野です。測位コンポーネントは、複数のセンサーの一つとして自動車に組み込むことができます 。レーダー、ライダー、ビジョンなどの相対測位情報センサーは、衝突防止などの鍵となります。車載センサーの場合、測位の推定はその特定の自動車にしか関係がありません。それに対し高精度測位は、位置観測データに加えて車両測位や計画軌道も共有されるような、コラボレーション型のユースケースで重要となります。このほか、高精度測位のメリットがありそうな応用分野には、土地測量、建設、農業、屋外採掘、海運、地上付近のドローントラフィック制御などがあります。このようにユースケースの範囲が拡大しているため、効率的かつスケーラブルに補助データをプロビジョニングする必要があります。

2018年より前の3GPP LTEの測位範囲はE911およびIoT測位のサポートに重点を置いていましたが、要求に応じてコネクティッドデバイスに一部のGNSS補助データを提供することも可能です。この測位範囲は、最近完成した3GPP LTEリリース15によって大幅に変わりました。このリリースの特長は、センチメートルの確度レベルで高精度のGNSS測位をサポートするために、測位補助データを効率的かつスケーラブルにプロビジョニングすることです。

次の動画では、クライアントの実装環境で稼動しているRTKベースの測位の精度について紹介しています。このデモは2018年夏に行われました。

GNSSベースの高精度測位

GNSS-RTKが高精度測位を実現する主な理由は、従来のGNSS受信機のようにコードフェーズ測定値のみを使用するのではなく、キャリアフェーズ測定値を使用するためです。

この場合のコードフェーズとは、受け取った各衛星信号を、その衛星信号と同じ擬似乱数コードに基づく複製と相関付けることで計測される到着時間を意味します。これにより、1メートル未満に相当するコードシンボルの長さの数分の一で到着時間を推定できます。使用可能な信号と衛星軌道に関する情報は、人工衛星のナビゲーションメッセージから取得できます。また、携帯電話事業者などの地上ベースのサービスプロバイダー経由の補助データとして、この情報を提供することもできます。

一方、キャリアフェーズは、衛星信号のキャリア周波数成分を追跡するときに得られます。キャリアフェーズは数ミリメートルの確度で推定できます。問題は、キャリア信号の期間がすべて同一なため、デバイスと人工衛星間の整数波長の数がわからない点です。人工衛星ごとの波長の整数は、高度な信号処理によって判別され、補助データによってサポートされます。GNSS-RTK補助データについては、RTCM(Radio Technical Commission for Maritime Services)特別委員会104(差動GPSおよびGLONASSを定義したものと同じ)で定義されています。現在は、エンドツーエンドのIPベースの信号プロトコルNTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)でサーバーからサブスクライブデバイスに補助を提供できます。

GNSS RTKは、一つの基準局から、または複数の基準局のネットワークからの正確な衛星信号測定値に基づきます。人工衛星ごとのキャリアフェーズ測定値は、実際のキャリアフェーズと波長の不明な整数によって決まります。また、受信機と人工衛星のクロックバイアス形式のノイズに加え、電離圏と対流圏内の遅延の影響も受けます。GNSS-RTK補助データは、OSR(Observation State Representation:観測状態表現)またはSSR(State Space Representation:状態空間表現)のいずれかで提供できます。OSRの場合、サーバーは、正確に認識された位置にある一つ以上の基準局からキャリアフェーズ測定値を提供します。基準局は、物理的な基準局の場合もあれば、サーバーが周囲の物理的な基準局から得たデータに基づいてキャリアフェーズ測定値を補間した位置(非物理的な基準局)を表している場合もあります。一方SSRの場合、サーバーは、クロックバイアス、軌道誤差、大気遅延などの地域的な誤差要因を推定し、推定した誤差パラメーターをデバイスに提供します。どちらの場合でも、サーバーは補助データの適切な範囲を認識するために、定期的にデバイスの位置に関する情報を必要とします。

LPP(LTE Positioning Protocol:LTE測位プロトコル)によるGNSS-RTK補助データの効率的なプロビジョニング

3GPPリリース15では、LPPを拡張するGNSS-RTK補助データのコーディングについて定義されています。このプロトコルは、SUPL(Secure User Plane Location:セキュアユーザープレーンロケーション)プロトコルか、ネットワーク内のコントロールプレーン信号を使用して、デバイスとロケーションサーバー間で伝送できます。後者の場合、無線ネットワークは補助データを認識し、他の汎用トラフィックより高い優先順位を補助データに付けることができます。ユーザープレーンとコントロールプレーンのどちらの伝送でも、ネットワークはサービスを提供する基地局の位置を認識しています。つまり、ネットワークはデバイスの大体の位置を推定していることを意味し、GNSS-RTK補助データの適切な構成を判別するにはこれで十分です。一方、NTRIPによってプロビジョニングされる補助データの場合は、デバイスが定期的に自身の位置をフィードバックする必要があります。

次の図は、LPPユニキャストを使用した三つのデバイスへのGNSS-RTKプロビジョニングを示しています。NRTK(Network RTK:ネットワークRTK)サーバーは物理的な基準局(黒)から測定値を取得し、非物理的な基準局(グレー)に対応する場所の測定値を補間し、この情報をロケーションサーバーに提供します。ロケーションサーバーは、デバイスの大体の位置に応じて、各デバイスに関連する補助データの範囲を特定します。

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測位補助データのブロードキャスティングと暗号化

同じ測位補助データセットを必要とする多数のUEが地域内に存在する場合、前述したユニキャスト手法では非効率なことがあります。大勢のサブスクライブユーザーに合わせて補助データのプロビジョニングを拡張できるようにするため、3GPPでは測位補助データのブロードキャストについても規定しています。このモードでは、ロケーションサーバーが各基地局のカバレッジエリアに関する測位補助データをエンコードし、場合に応じて暗号化します。コンパイルされたPos SIB(Positioning System Information Block:測位システム情報ブロック)は対応する基地局に定期的に送信され、この基地局からシステム情報のブロードキャストによってデータが伝送されます。基地局の位置は認識されているため、この情報を利用して関連する測位補助データセットをコンパイルできます。また、ロケーションサーバーは対応する復号鍵をMME(Mobility Management Entity:モビリティー管理エンティティー)に送信します。

対応デバイスは、HSS(Home Subscriber Server:ホームサブスクライバーサーバー)内でのサブスクリプション範囲に基づいて、MMEから復号鍵を取得します。これにより、デバイス間を区別して、サブスクライブユーザーへのサービスとして測位補助データを使用できるようになります。デバイスは、基地局からブロードキャストされたPos SIBのリストを取得して、ブロードキャストされている測位補助データの内容を理解し、暗号化可能な情報と利用可能な情報を判別します。使用した暗号鍵は一つ以上の追跡エリアで有効であり、有効期限のトリガーが含まれています。有効な鍵のない追跡エリアにデバイスが移動するか、保管している鍵の有効期限が切れたら、デバイスはMMEから新しい鍵を取得する必要があります。

次の図は、暗号化してブロードキャストされた測位補助データのプロビジョニングを示しています。この図では、MMEから有効な鍵を取得済みでブロードキャストデータを復号化できるUEもあれば、この情報にアクセスできないUEもあります。

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このブログ投稿で説明したように、LTEリリース15で標準化されたGNSS-RTKサポートがLTEだけでなく5Gネットワークにもメリットがあることは明らかです。GNSS-RTK補助データ信号は、リリース15の協定に従ってNR(New Radio)デバイスでもサポートされています。NRに特化した改良と適応については、NR固有の測位方式とともに、最近開始されたリリース16のNR測位検討事項に含まれています。

測位ソリューションの標準化の詳細については、過去のブログ投稿「Indoor positioning enhancements in LTE standardization」および「IoT positioning in LTE standardization」を参照してください。

標準化の概要については、「Setting the standards」ページを参照してください。

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フレドリック・グナソン(Fredrik Gunnarsson)

フレドリック・グナソンは、エリクソンリサーチでRANオートメーションと測位技術のエキスパートとしてリサーチ、コンセプト、標準化、具現化に携わっており、

各分野で多数の特許を保有しています。2000年にスウェーデンのリンショーピング大学で電気工学の博士号を取得し、現在も准教授の地位を保有しています。また、IEEEのシニアメンバー、IEEE Trans. on Vehicular Technologyの共同編集者、年次ワークショップIWSONの主催者の1人でもあります。2013年にはEricsson Inventor of the Yearを受賞しました。

 

 

 

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サラ・モダレス・ラッツアヴィ(Sara Modarres Razavi)

サラ・モダレス・ラッツアヴィは2014年にエリクソンに入社し、現在はシニアリサーチャーと測位技術の標準化のチームリーダーを務めています。主な研究テーマは測位技術で、屋内測位、マシンタイプ通信向けの測位サポート、5G測位などの幅広い特許を多数保有しています。スウェーデンのチャルマース大学では電気通信学の理学修士を取得し、スウェーデンのリンショーピング大学ではインフラ情報科学の博士号を取得しました。エリクソンガレージプロジェクトに積極的に携わっており、エリクソンリサーチのヤングアドバイザリーボードのメンバーでもあります。

 

 

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マーケティング&コミュニケーション部

エリクソン・ジャパンにおける情報発信を担当。社外や社内のステークホルダーに対してエリクソンのメッセージを伝え、事業活動に対して理解を高めていくことで、日本にエリクソンファンを増やしていくことをミッションとしています。

ホームページやソーシャルメディアなどのオンラインコミュニケーションも運営。