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Mobile World Congress 2019

March 13, 2019
著者: 藤岡 雅宣   カテゴリー:レポート

今年も、移動通信関連の世界最大の展示会Mobile World Congress(以下、MWC)2019が、2月25日~28日の4日間スペイン・バルセロナで開催されました。今年のMWCは「Intelligent Connectivity」というテーマの下に、世界198の国と地域から10万9千人以上が参加しました。国際会議と2,400以上の会社による展示が同時並行的に行われ、様々な発表や新たな製品、ソリューションの紹介が行われました。エリクソンでは、今年は5G、AI、IoTを中心として「5GとIoTによる産業変革」、「5Gによる新たなユーザ・エクスペリエンス」、「5Gへのネットワーク進化」、「自動化とAIによる運用の効率化」、「イノベーションと新たなビジネスモデル」という5つのエリアに分けて展示を行いました。以下、今年のエリクソンの展示のハイライトについてまとめます。

「5GとIoTによる産業変革」エリアでは、スウェーデン・ヨーテボリで計画中の自動運転トラック導入に向けてのデモとして、スウェーデンのテストコース上の開発中のEVトラックを自動運転支障時を想定して来場者に会場のコックピットから遠隔運転してもらいました。トラックの前後左右の4つのカメラ映像を5G無線を利用して送信し、スウェーデンからスペインまでは地上伝送路を通して全体で100ms以下の遅延を実現して、支障無く遠隔運転を行うことができました。また、製造工場でのセルラーコネクティビティ利用が有益として、工場のロボットが製品に応じて異なる部品を保管タワーから製造ラインに自動的に供給するプロセスをデモしました。製品のカスタム化に応じてロボットの動作を柔軟に変更可能なことを示しました。

「5Gによる新たなユーザ・エクスペリエンス」エリアでは、没入型スポーツ体験としてカーレースの様子を5Gモジュールを搭載したVRグラスで会場に設置した複数のカメラを切替えながら、様々な場所から、様々な角度で観戦するデモを行い、5Gの低遅延を利用することで支障なく楽しめることを示しました。また、5Gの一つの適用分野で家庭へのブロードバンドを提供するFWA(Fixed Wireless Access)におけるPlug & Playとして、家庭内での無線受信装置の最適設置場所をスマートフォンのアプリを用いて手軽に探し出したり、基地局の位置・追加などの情報を随時提供する様子をデモで示しました。

「5Gへのネットワーク進化」エリアでは、既存無線ユニットでのSpectrum Sharingとしてエリクソンが2015年以降事業者に納入した約300万の基地局でソフトの更新によりLTEと5G NR(New Radio)を混在して利用可能であり、同一スペクトルで1ミリ秒単位でLTEとNRをダイナミックに切替えることが可能なことをデモで示しました。また、4G/5Gデュアルモードコアとして既存の4Gコアネットワークから仮想化を経て、5Gコアネットワーク(5GC)と共存可能なクラウドネーティブなコアへの進化の道筋をデモしました。更に、セルラーIoTの進化としてブロードバンドIoT及び産業自動化IoTという新たなカテゴリーを示し、ブロードバンドIoTの例としてバルセロナの海岸に浮かした水質測定用無人小型ボートの遠隔運転のデモを行いました。

「自動化とAIによる運用の効率化」エリアでは、Network Slicing Automationとして顧客の特定の要求をスループットや遅延等のSLAを含むブループリントとして入力し、これに対してエッジやセンターの最適な位置で必要なリソースを自動的に割当ててネットワークスライスを生成する過程をデモで示しました。スライスの運用開始後に元の要件を満足していることを保証する仕組みも示しました。また、エリクソンが通信事業者のネットワーク運用を行うマネージドサービスにおいて、AIと自動化を軸としたOperations Engineを利用して顧客である事業者がコスト削減などの目標に対して必要な機能を対応させ、それを実現するためのデータやAIなどのデータ解析機能などを自動的に割当てる仕組みをデモで示しました。

「イノベーションと新たなビジネスモデル」エリアでは、多数ロボット間の連携として複数のロボットの動作プログラムをエッジサーバに集中して配備し、動き回るロボットとエッジサーバ間を無線接続して制御信号の伝送遅延の違いによるロボット間の連携動作の違いをデモしました。6本の脚の各脚が独立したロボットである構造物において、低遅延の5G接続では各脚が連携して円滑な動作が可能であるが、少し遅延の大きな4G接続ではロボット間の円滑な連携に支障が出ることを示しました。一方、Ericsson Radio Stripeでは、ビニールテープなどに信号線、電源線を印刷するイメージで、直線状の配線上にアンテナと信号処理素子を配備する斬新なアンテナ技術を展示しました。3.5GHz帯などアンテナ自体も印刷するケースと、28GHz帯など信号処理素子上にアンテナを形成するケースを示し、床のカーペット、配線ダクト内、天井にぶら下げるなど、様々な実装が可能でシームレスなカバレッジを直線上のアンテナが相互に連携する分散アンテナにより実現することを示しました。これは技術的な検証が進んでおり、5~10年後には実用化が見込まれます。

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上記で紹介しなかった展示・デモも5G、AI、 IoTに関わるものが多くありました。日本からも事業者、メディア、アナリストなど多数の訪問者があり、盛況のうちに4日間のイベントが終わりました。なお、来年のMWCは2020年2月に今年と同じ会場で開催される予定です。

 

著者

藤岡 雅宣

チーフ・テクノロジー・オフィサー

1998年に日本エリクソン(現エリクソン・ジャパン)入社。IMT2000プロダクト・マネージメント部長や事業開発本部長として新規事業の開拓、新技術分野に関わる研究開発を総括。2005年2月より現職。エリクソン入社以前は、KDDにてネットワーク技術の研究や新規サービス用システムの開発を担当。
著書として「ISDN絵とき読本」、「ワイヤレスブロードバンド教科書」、「IMS入門」(何れも共著)など。